建物の外壁で、「送水口」と書かれた金属の差込口を見かけたことはありませんか?今回は、消防隊が消火活動に使う「連結送水管」の送水口について紹介します。
結論からお伝えすると、連結送水管は地階を除く階数が7以上の建物などに設置が義務付けられ、配管を設置した日から10年を経過した日以降に行う点検では、原則として3年ごとに配管の耐圧性能点検が必要になります。
この記事では、建物オーナーの方向けに、国の消防法令と消防庁の点検基準・点検要領を基に、連結送水管の仕組み・設置基準・点検内容を解説します。那須地区(大田原市・那須塩原市・那須町)での標識や使用開始の手続きは、那須地区消防組合火災予防条例・同施行規則に基づいて説明します。
連結送水管の仕組みと消防隊の使い方
📌 消防車から送った水を建物内の配管で上階へ届け、消防隊が放水口にホースをつないで使います
高層の建物で火災が起きると、地上の消防車から上の階までホースを延ばすのは大変です。階段で長いホースを引き回すと時間がかかり、高低差やホース内の摩擦によって圧力も低下します。
そこで、あらかじめ建物の中に「消火用の水の通り道」をつくっておくのが連結送水管です。例えるなら、消防隊のために建物に埋め込んでおく、太いホースのようなものです。
使われ方の流れは次のとおりです。
- 消防隊が、建物外部の送水口に消防車のホースをつなぐ
- 消防車のポンプで水を送り込むと、配管(立管)を通って上の階へ上がる
- 消防隊員が活動に適した放水口にホースをつなぎ、火災が発生した場所へ延ばして消火する
なお、名前の似た「屋内消火栓」は、建物の利用者や従業員が初期消火に使う設備です。連結送水管は、あくまで消防隊が本格的な消火活動に使う設備という点が大きな違いです。
💡 花塚防災のワンポイント
外壁や敷地の道路側に「送水口」の標識があっても、必ずしも連結送水管用とは限りません。スプリンクラー設備などにも送水口があります。標識に書かれた設備名を確認し、判別できない場合は設備図面や点検報告書で確認しましょう。
連結送水管を構成する送水口・配管・放水口
📌 基本は送水口・配管・放水口。建物の階数や高さに応じて放水用器具や加圧送水装置も必要になります
送水口(建物の外)
消防車からのホースをつなぐ入口です。消防法施行規則第31条第1号により、ホース接続口を、地盤面からの高さが0.5m以上1m以下の位置に設けることとされています。
消防法施行令第29条第2項第3号では、消防ポンプ自動車が容易に接近できる位置に設けることとされています。付近の見やすい箇所には、連結送水管の送水口である旨の標識を設けます。
配管(立管)
送水口から上の階へ水を運ぶ縦の配管です。配管の中に常に水を満たしておく「湿式」と、ふだんは水を入れておかない「乾式」があります。
湿式・乾式の別を含め、配管は消防法施行規則第31条の基準に適合させます。地階を除く階数が11以上で高さ70mを超える建物については、後述のとおり湿式と加圧送水装置が必要です。
放水口
消防隊員がホースをつなぐ出口で、階段室や非常用エレベーターの乗降ロビーの付近など、消防隊が有効に消火活動を行える位置に設けられます。この基本的な位置の基準は、消防法施行令第29条第2項第1号で定められています。
高層建築物で追加される設備
地階を除く階数が11以上の建物:11階以上の部分の放水口は双口形とします。原則として放水用器具を格納した箱も必要で、1つの直通階段について階数3以内ごとに、放水口から歩行距離5m以内に設けます。放水用器具の搬送が容易な一定の建物には例外があります。
地階を除く階数が11以上で、高さ70mを超える建物:連結送水管を湿式とし、加圧送水装置を設けます(消防法施行規則第31条第6号イ)。これは、高い位置の放水口でも必要な圧力・流量を確保するためです。
※那須地区の標識は、那須地区消防組合火災予防条例施行規則第9条・別表第3で定められています。連結送水管の送水口・放水口を示す標識と、放水用器具格納箱を示す標識は、短辺10cm以上・長辺30cm以上、赤地に白文字です。最小寸法を超える場合も短辺と長辺の比率を保ちます。
連結送水管の設置対象となる建物
📌 「7階以上」「5階以上かつ6,000㎡以上」が建物オーナーに関わる主な基準です
連結送水管の設置義務は、消防法施行令第29条で定められています。消防法施行令別表第1に掲げる防火対象物のうち、次のいずれかに該当するものが対象です。括弧内は放水口の基本的な設置範囲と水平距離です。
- 地階を除く階数が7以上のもの(3階以上の各階に、各部分から水平距離50m以下で放水口を配置)
- 地階を除く階数が5以上で、延べ面積が6,000㎡以上のもの(同上)
- 延べ面積が1,000㎡以上の地下街(地階の各部分から放水口までの水平距離50m以下)
- 延長50m以上のアーケード(令別表第1(18)項。各部分から放水口までの水平距離25m以下)
- 上記以外で、道路の用に供される部分を有する防火対象物(道路部分の各部分から放水口までの水平距離25m以下)
那須地区でも、ホテル・旅館や共同住宅などについて、用途・階数・延べ面積をこの基準に照らして設置要否を判断します。
※上記の「地階を除く階数が7以上」「地階を除く階数が5以上」の階数は、地階を除いて数えます。
那須地区での使用開始の届出と検査
那須地区消防組合火災予防条例第43条第1項では、消防法施行令別表第1に掲げる防火対象物(同表(19)項・(20)項を除く)をその用途に使用しようとする者に、使用開始の日の7日前までに消防長へ届け出ることを義務付けています。
同条第2項では、使用開始前に消防長の検査を受けることも定めています。これは建物の使用開始に関する手続きであり、連結送水管の設置対象は、前述の消防法施行令第29条に基づいて確認します。
💡 花塚防災のワンポイント
新築・増改築や用途変更を計画する際は、設備の設置要否と使用開始に必要な手続きを、那須地区消防本部または管轄の消防署へ事前に相談しましょう。
配管の耐圧性能点検の時期と方法
📌 配管設置後10年を経過した日以降の点検で、水圧に耐えられるかを確認します。前回の耐圧性能点検から3年未満の場合は除かれます
連結送水管は、ふだん使わない設備です。そのため、配管の内部で錆や劣化が進んでいても気づきにくく、いざ消防車が高い圧力で送水したときに、継ぎ目から漏れたり破損したりするおそれがあります。
そこで消防庁の点検基準では、連結送水管の配管について、次の条件で耐圧性能の点検を行うこととされています(点検基準 別表第20「配管等」の項)。
- 配管を設置した日から10年を経過した日以降に点検を行う場合に実施
- ただし、前回の耐圧性能点検から3年を経過していない場合は対象外
- 屋内消火栓設備と配管を共用している部分は対象外。ただし、送水口から直近の逆止弁までの配管は確認が必要
点検の方法
消防庁の点検要領では、次の手順で確認するとされています(点検要領 第20「配管の耐圧性能」の項)。
- 送水口から、動力消防ポンプまたは同等の試験機器で送水する
- 配管内の空気を抜いたあと、テスト弁を締め切る
- 急な昇圧を避け、圧力計を見ながら徐々に加圧する
- 締切静水圧を3分間かけて、送水口本体・配管・接続部分・弁類などに変形や漏水がないかを確認する
締切静水圧は設計送水圧力とし、加圧送水装置がある場合はその締切圧力とします。また、加圧送水装置の一次側の圧力は、ポンプの設計押込圧力以下とする必要があります。
点検中は放水口やテスト弁などを操作するため、入居者・利用者への事前のお知らせが必要になる場合があります。乾式で凍結のおそれがある場合は、点検後に配管内を十分に排水します。
ホースの耐圧性能点検
📌 放水用器具のホースは、製造年の末日から10年を経過した日以降の点検で耐圧性能点検の対象になります
地階を除く階数が11以上の建物では、原則として11階以上の部分に、ホースやノズルを格納した放水用器具格納箱を設けます。
このホースについても、ホースの製造年の末日から10年を経過した日以降は、耐圧性能点検の対象になります。ただし、前回の耐圧性能点検から3年を経過していない場合は除かれます(点検基準 別表第20「ホース及びノズル」の項)。
点検要領では、ホースの端末部に充水し、耐圧試験機などでホースの種類に応じた使用圧を5分間かけて確認します。加圧前に接続状態と残留空気がないことを確認し、急激な昇圧を避けます。
「配管は10年、ホースも10年」と、どちらも10年が節目になると覚えておくと便利です。ただし、配管は「設置した日」、ホースは「製造年の末日」が起算点なので、時期がずれることがあります。
定期点検とオーナーができる送水口の確認
📌 法定点検は業者に任せつつ、送水口まわりの「障害物」と「異物」はオーナーも確認できます
連結送水管も、ほかの消防用設備と同じく、消防法第17条の3の3に基づく定期点検と、所轄の消防長または消防署長への結果報告が義務付けられています。点検の周期は、平成16年消防庁告示第9号により、機器点検が6か月ごと、総合点検が1年ごとです。連結送水管の総合点検では、加圧送水装置などの該当する項目を確認します。配管・ホースの耐圧性能点検には、前述の10年・3年の条件があります。那須地区消防本部の公式案内でも、点検と結果報告の周期を確認できます。
報告の頻度は、ホテル・飲食店などの特定防火対象物が1年に1回、共同住宅・事務所などの非特定防火対象物が3年に1回です(消防法施行規則第31条の6)。これは点検そのものの周期とは異なります。建物の用途が複合している場合などは、防火対象物の区分を確認してください。
定期点検では、消防庁の点検基準に沿って、たとえば次のような項目を確認します(点検基準 別表第20「送水口」「放水口」の項)。
- 送水口の周囲に、使用や消防車の接近の妨げになる物がないこと
- 送水口に漏れ・変形・損傷がなく、異物が入っていないこと
- パッキンが劣化しておらず、ホースを容易に着脱できること
- 送水口・放水口の標識が適正に設けられていること
- 放水口の開閉弁が、容易に開け閉めできること
このうち、送水口まわりの状況はオーナーや管理者の方でも日頃から確認できます。
💡 花塚防災のワンポイント
送水口の前に自転車や植木鉢、ごみ置き場がないか、キャップに破損・脱落がないかを日頃から確認しましょう。異物や破損を見つけたら点検業者に相談してください。また、凍結のおそれがある場所の配管は、設備の方式や保温・排水の状態を冬前に点検業者へ確認しておくと安心です。
よくある質問(Q&A)
Q1. 連結送水管の点検は、自分たちで行ってもよいですか?
A. 日頃の目視確認はオーナーでもできます。有資格者による法定点検が必要なのは、延べ面積1,000㎡以上の特定防火対象物、同規模の非特定防火対象物で消防長または消防署長が指定するもの、特定一階段等防火対象物、全域放出方式の二酸化炭素消火設備が設けられた防火対象物などです。それ以外は関係者による点検も認められますが、耐圧性能点検には専門的な機器・知識が必要なため、当該設備の点検に対応する消防設備士または消防設備点検資格者への依頼をお勧めします。
Q2. 耐圧性能点検で漏水が見つかったらどうなりますか?
A. 消防用設備等は、消防法第17条に基づき基準に適合するよう維持する必要があります。漏水や変形が見つかった場合は、点検業者と相談して修理・交換などで不良箇所を是正し、性能を確認します。点検結果は所定の報告時期に所轄の消防長または消防署長へ報告します。
Q3. 屋内消火栓と配管を共用している場合、その部分も耐圧点検が必要ですか?
A. 屋内消火栓設備と配管を共用している部分は、連結送水管の配管の耐圧性能点検の対象外とされています。ただし、送水口から送水口直近の逆止弁までの間の配管は確認が必要とされています。
Q4. 竣工から10年以上たちますが、耐圧点検をしたことがありません。
A. 築年数ではなく、配管を設置した日から数えます。設置後10年を経過した日以降の点検では、原則として耐圧性能点検の対象です。ただし、前回の耐圧性能点検から3年未満の場合や、屋内消火栓設備との共用部分には除外規定があります。設置日と過去の点検報告書を確認し、未実施であれば早めに点検業者へご相談ください。
Q5. 那須地区の放水口の位置や標識は、何を根拠に確認すればよいですか?
A. 放水口の配置は消防法施行令第29条、設備の詳細は消防法施行規則第31条に基づき確認します。標識の寸法・色は、那須地区消防組合火災予防条例施行規則第9条・別表第3が根拠です。個別の建物への適用は、設備図面を用意して那須地区消防本部または管轄の消防署に確認してください。
まとめ
連結送水管は、高層の建物や地下街などで、消防隊がすばやく消火活動を行うための消防隊専用の設備です。地階を除く階数が7以上の建物などに設置が義務付けられています。
配管設置後10年を経過した日以降は、原則として3年ごとの耐圧性能点検の対象になります。通常の定期点検も継続し、いざというときに確実に水を送れる状態を保つことが大切です。あわせて、送水口の前を空けておく、異物がないか見ておくといった日頃の管理も心がけましょう。
花塚防災にご相談ください
花塚防災では、連結送水管の定期点検・耐圧性能点検・修理・改修工事をはじめ、消防用設備全般の施工・メンテナンスを承っております。那須町・那須塩原市・大田原市の消防設備のご相談を承ります。
消防設備や防火設備でお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。